現在カリフォルニアでは、州知事であるギャビン・ニューサムの解職と求める動きが大きくなってきています。当地では住民による解職請求の署名が一定数を越えると、現職の知事の罷免するか否かの住民投票を行う仕組みがあります。既に住民投票に必要な150万の署名のうち半数以上が集まっていて、その数はさらに増加すると予想されています。
科学と統計に基づいた感染対策
今年3月、全米で最初の外出禁止令が、州全域に発表されました。このとき、ニューサムの感染拡大防止に対する積極的で素早い対応策は、住民から高い評価を得ました。
8月には州内の経済活動再開に向けた新たな枠組みが制定され、州内各郡を「感染者数」及び「検査陽性率」に応じて四つの階層にわけた上で、各産業が再開できる条件が公開されました。
カリフォルニア州政府の科学と統計に基づいた一貫性のある政策は、住民の信頼を得ていたはずなのですが。
住人の高まる不安と不満
予想外に長引く外出禁止令に、人々は疲れ切っています。追い討ちをかけるような感染第三波の到来に、住民の不安と不満は爆発寸前と言えるでしょう。
12月頭、感染再拡大の対応策として、ICU(集中治療室)の受入れ可能人数が15%未満になる地域において、「地域別の自宅待機令」が発表されました。制限の内容は下記の通りです。
- 予防措置を講じた上の営業が許可されているもの
- 重要なインフラストラクチャー(電気、水道、公共交通機関など)
- 学校(免除を受けた場合/一般的な公立校は全てオンライン授業)
- 緊急でない医療及び歯科治療
- 保育園、幼稚園
- 屋外レクリエーション施設(州立公園など)
- 社会的距離を保ち、個人の健康を促進する目的でのみ営業可能。飲食物の販売、キャンプ場での宿泊は不可。
- スポーツジム
- 屋内での運営は不可。
- 小売店(食料品や衣料品、雑貨のお店など)
- 店内の人数を収容人数の20%(スーパーは35%)に制限した上で営業可能。慢性疾患を持つ人や高齢者のた目に専用の営業時間を儲けなくてはならない。
- ショッピングセンター
- 施設内の人数を20%に制限。フードコートなど、店内での飲食は禁止。
- レストラン
- テイクアウトもしくは配達でのみ営業可能。屋外・屋内での飲食は不可。
- オフィス
- リモートでの作業が不可能なインフラストラクチャーを除き、リモートワークのみ許可。
- 礼拝所
- 野外活動のみ許可。
- エンターテインメント制作
- ライブ視聴者なしでの運営。
- 全て閉鎖されるもの
- ヘアサロンと理髪店
- 美術館、動物園、水族館、遊園地
- 映画館
- ワイナリー、バー、醸造所、蒸留所(製造、小売をのぞく)
- カジノ
- スポーツ観戦
上記の命令に違反した場合、罰金、営業許可の取り消し、または裁判所が課す罰則により罰せられる可能性があります。全米で最も長く、そして厳しいカリフォルニア州の自宅待機令に対する不満の声は、あちこちから聞こえてきます。
新型ウイルスが物体の表面を介して感染すると言う科学的エビデンスはないのに、なぜ子供たちは公園で遊べないのか。屋外での飲食で感染が広がったと言う証拠はないのに、なぜ屋外営業が停止されなければならないのか。スーパーの入り口には入店を待つ人の長い列がいつも出きています。前後になった知らない人同士が、2メートルのソーシャルディスタンスを守りながら、州政府への文句で盛り上がっている光景も、よく見かけます。
ニューサムのリコールを求める人たちは、全米で最も高い税金、厳しい銃規制、など、様々な州政府の政策に不満を持っています。さらに今回の厳しいコロナ対策が、人々の反感を燃え上がらせるガソリンとなっているのは間違いないようです。
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今週末、南カリフォルニア地域で利用可能な集中治療室の収容人数は5%を切り、ベイエリアでも目安となる15%に近づいてきています。100万人都市であるフレズノを含むサンホアキンバレーでは、利用可能なICUの空きがゼロとなり、医療崩壊の危機に晒されています。今後迎えるホリデーシーズンで人々の集まりや往来が増える中、状況はさらに悪化していくだろうと予想されています。それでも、ニューサム知事の罷免と感染防止対策の制限防止を求める声は弱まりません。
大統領選におけるトランプ陣営のマスク忌避然り、最近活発になっている反ワクチン運動然り、政府や専門機関から強制される感染防止対策には、強い拒否感を示す人が多いアメリカ。「自由のためなら死んでもいい」という、建国以来この国の人々を支え、現在まで受け継がれてきた自由の旗手としてのプライドを感じずにはいられません。
他方、全体のためなら個人の我慢や不利益も受け入れるべし、という日本。
この国民性の違いが両国の感染拡大状況に大きく反映されている気がしますが、どうでしょうか。
最後に、独立戦争の際、大陸軍の将軍として英国と戦ったジョン・スタークの言葉を引用したいと思います。
Live free or die. Death is not the worst of evils.
自由に生きよ、さもなくば死を。死は悪の中でも最大のものではない。
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