オンライン・スクーリング



私が住んでいるカリフォルニア・ベイエリア に、シェルター・イン・プレイス命令(屋外退避勧告)が出されてから20日近くが過ぎました。現在ベイエリアでは、ニューヨークのような爆発的な感染拡大はおきていないものの、感染者は増え続けており、上昇はさらに続くと言われています。当初4月頭までとされていた退避勧告は5月まで延長され、閉鎖中の教育機関が再開するのは、秋以降と言われています。


オンラインスクーリングへの移行



息子の通うミドルスクールでは、シェルター・イン・プレイス命令が出された約1週間後から、インターネットを利用した遠隔授業がスタートしました。

授業は平常時と同じ、8時半からスタートします。
まずはZOOMにアクセスしてホームルームに出席。そのあとは、普段の時間割にそって授業が進められていきます。授業には、Google クラスルーム、ドキュメントなどのアプリが使用されるほか、カーンアカデミー等の外部のリソースが使われているようです。フィジカル・エデュケーション(体育)のクラスでは、野球やバスケットボールの試合の動画を見て質問に答える課題や、アプリを使ったワークアウトなどが行われていました。

途中休憩を挟み、授業が終了するのは12時頃。
普段なら、学校が終わるのは3時ごろです。加えて、毎日欠かさず宿題が出ますが、この期間は「子供と親のストレスを軽減するため」に、宿題や授業時間以外の課題は減らされているとのことです(本人談)。

息子が通う学区では以前から、ICT教育(パソコンやインターネットなどの情報技術を活用した教育)を実践していてました。ミドルスクールの入学時には生徒1人につき1台Googleクロームブックが提供され、授業、テスト、自宅学習、成績管理など、あらゆることがパソコン上とオンラインで行われています。筆記用具やノート、教科書の類をほとんど使わない学習スタイルは日本でのそれとは大きく異なるので、最初は衝撃を受けました。しかし慣れてみると、子供の理解度が達成度合いが確認しやすかったり、先生とのコミュニケーションが取りやすかったりと、親としてもメリットを感じることが多いです。

プラットフォームが整っていて、生徒も先生も、そして親も、オンラインスクーリングにある程度慣れていたため、移行に伴う混乱は特に見られませんでした。しかしこれは、非常に幸運な事例だっと言えます。全米では、遠隔授業を受けられない学生の存在が、新たな問題になっています。



全ての学生にインターネット環境を


コロナウイルスの感染拡大を受け、全米にある9割以上の公立および私立学校が閉鎖を余儀なくされました。さらに12の州が、学年度の残りの期間(6月半ばまで)の学校閉鎖を命令もしくは推奨しています。

学校側がインターネットに精通していて、パソコンやインターネット回線の世帯普及率が高い学区では、比較的スムーズにオンラインスクールへの移行が進められました。
一方で、インフラが不足し、低所得世帯の多い学区では、遠隔学習を断念せざるを得ないケースも少なくありません。

マイクロソフトが2018年におこなった調査によると、アメリカ人の約半数が自宅でブロードバンド回線を利用できません。ビデオスクリーミングやオンラインチャットが可能な速度でインターネットに接続できない家庭や、高額な通信料を払うことが難しい世帯もあります。
下の表は、家庭で高速インターネットに接続できる人のパーセンテージをカウンティごとに色分けしたものです。拡大しカーソルを合わせると、割合が表示されます。20パーセント以下の地域の多さに驚きました。





デバイスの有無や、インターネットへのアクセスの不公平は、アメリカの格差社会をそのまま反映しています。さらに現時点で、この問題に対処する政府からの援助や対応策は一切ありません。

そのため、多くのプロバイダが、ネット利用料金の延滞料を免除したり、データ許容量の上限を引き上げるなどの対策を打ち出しました。グーグルは、カリフォルニア州の学校が年度内閉鎖されることを受け、ブロードバンドアクセスを増やすために、州内に10万のアクセスポイントを設定しました。少なくとも3ヶ月間は、無料でインターネットに接続することが可能です。


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あまりに突然だった学校のシャットダウン。
人生で勉強に打ち込める期間は長いようでとても短いものです。その貴重な時間を奪われてしまった学生たちの悔しさは察するに余りあるものがあります。
せめて、できなくなってしまったことを数えるよりも、この状況のなかでできることの可能性にフォーカスして、これから長く続いていく隔離期間を前向きに過ごしていきたいものですね。




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