キャンプ:Wild Tender Ranch


プレ思春期真っ只中で、このところ毎日のように親と衝突するようになった息子。息抜きと気分転換がてら、母子2人でキャンプに出かけることにしました。








まず向かったのはサンタクルーズ。
港の桟橋で2人乗りのカヤックを借りて、モントレー湾をクルージングすると、桟橋の下に集まるアシカや、流されないよう脚を海藻に絡ませて昼寝をするラッコを眺めることが出来ます。この日は赤ちゃんをお腹の上であやすラッコに遭遇し、その愛らしさに悶絶しました。














ひとしきり漕いだあとは、桟橋のレストランで名物のクラムチャウダーなどの昼食を取り、ハイウェイを一路北へ。サンタクルーズからサンフランシスコへ続く海岸線では、人の手の一切入らない、美しく雄大な自然を見ることが出来ます。普段生活しているシリコンバレーの喧騒がまるで嘘のような景色を前に、息子がふと「まるでファンタジーの物語の世界みたい」と呟いたことが印象的でした。














さて、ロングドライブの末にたどり着いたのは、海を見渡す高台にある牧場、WildTender Ranch  (通称「馬達の聖域」)。
この牧場は、年老いたり怪我をした馬を、殺処分や不適切な飼育から保護する目的で運営されています。広大な(という言葉を陳腐に感じてしまうほど広大な)土地で、馬達はほとんど野生に近い状態で過ごしています。




私たちが宿泊するキャンプサイトはこの牧場の中にあるのですが、そこへ行くまでには、馬達が優雅に闊歩する敷地を進んでいかなければなりません。牧場主から事前にもらったメールには、馬についての長い注意書きがありました。




ゲートから牧場に入ろうとするときに、近くに馬がいることがあります。
もし馬がゲートから出ようとしていたら、ゲートにあるロープを回して振りながら、「バック、バック」と言って馬を下がらせてください。
馬がほかの馬をどかそうとするときに尻尾を振るように、ロープを振ってください。
それでも彼らが動かない時は、彼らのしたいようにさせてください。絶対に力でどうにかしようとしてはダメです!
もし馬がゲートの外へ出て行ってしまうようなことがあったら、すぐに連絡して下さい。
よくある事だから大丈夫!誰も驚かないし、誰もあなたを責めません!




馬達は、見慣れぬ侵入者が珍しいのか、臆することなく私たちのすぐ側まで寄ってきます。遠くからみている分には優雅な馬も、近くで見るとその大きさに思わずたじろぎます。どうかカウボーイの真似をしなくてもすみますように、と心の中で祈りながら、音を立てないように静かに静かに、のんびり草をはんでいる馬達の間を通り抜けました。


























私たちがその夜泊まるのは、牧場内にポツンと建てられたドーム状のテント。テントの脇には木のテーブルと椅子が設えてあります。50メートル離れたところには、日本の工事現場などで見かける仮設トイレがありました。遠くの方に厩舎らしき建物がポツンと見えるほかは、人工物はありません。そして、茫々たる草原の向こうには雄大な海が広がっていて、遠くで海鳴りの音がしていました。牧場主とのやりとりは携帯電話のテキストでおこない、支払いも既にネットで済ませているので、牧場主と顔を合わせることはありません。馬やロバ、羊、アルパカ、それから野生のウサギや何種類もの鳥達に囲まれていても、私たち以外の人間の姿を見かけることはありませんでした。




ドームの中には、大きなダブルベッドが一つ。両サイドに小さなテーブルが置いてあり、ロウソクやミネラルウォーターが用意されていました。清潔で、ミニマムで、シンプルなインテリアが、窓の外の絶景の素晴らしさを一層引き立てているようでした。


























夏の北カリフォルニアは、9時近くまで太陽が沈みません。黄昏の中、のんびりコッヘルで夕食を作り、息子はオレンジジュースを、私はワインを片手に、2人でとりとめのない話をして過ごしました。テレビも、インターネットも、宿題も、家事も、そして時計もないこの場所では、食事と会話が普段よりもずっと濃厚に感じられ、豊かな時間を過ごせた気がします。




















翌朝は、近くのビーチを散歩しました。
世のミニマリストがこぞって言うことですが、人生をシンプルにすると本当に大切なものが見えてくる、と言うのは真実だと思いました。時間と空間、そして思考にももっと余白を持って生きて行きたいものですね。
















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