ハワイ島北東部の海岸線に位置するワイピオ渓谷は、幅1.6kキロ、奥行き10キロほどの谷です。
谷の両側には高さ600メートルの崖があり、いたるところから滝が流れ落ちています。谷底に辿り着くためには、海から黒砂のビーチに上陸するか、急峻な崖に設けられた傾斜のきつい坂を下っていかなければなりません。谷底への道は悪路のためレンタカーの保証対象外なので、私たちは谷への入り口から出ている四輪駆動車のツアーを使用しました。

車1台通るのがやっとなほど狭く、途中45度の傾斜にもなる道を進んで谷底に降りれば、そこは文字どおり桃源郷。右を向いても左を向いても上を向いても下を向いても、滴るようなみずみずしい緑が生い茂っています。
空気はどこまでも潤っていて、吸い込むとふんわり甘い香り。 バナナやグァバ、マウンテンアップル、スターフルーツなどのトロピカルフルーツの木があちこちにあり、色とりどりの花がまるで降り注ぐように咲いています。タロイモの水田の畦では、野生の馬が悠々と歩いていて、私たちの車を追いかけてきました。あちこちに小川が流れていて、どこにいてもせせらぎの音が聞こえます。それらは皆谷の中央を流れるワイピオ川に注ぎ込み、海へと続いて行くのです。






この場所はハワイアンにとって最も重要な聖地の一つで、崖の両側には歴代の王たちが埋葬されています。今なお彼らの強力なマナ(霊力)によって守られていると信じられていて、1946年と1979年の大津波で壊滅的な被害を受けたものの、この谷では一人の死者もでなかったことも、マナのおかげだと言われています。
何もかもがありのままの姿で、葉一枚、水しずく一滴に至るまで、どこか神聖な美しさ。まるで古代の世界にタイムスリップしたか、ファンタジーの世界に入り込んでしまったかのような気分になる、忘れられない場所でした。
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